「片腕を一晩、お貸ししても良いわ――」と娘は言った。その日の朝、花屋で買った泰山木の大きな蕾を美しいと思った事を知ってか知らずか、女が自身の身体から、その蕾のような丸みを帯びた白い肩の処から外してくれた。その娘の右腕を男は受け取る。――この腕はモノを言うだろうか? 話をしてくれるだろうか?男の密かな愉しみに、腕は腕の出来る事しか出来ないと言いながらも、女は「お試しになって」と男を送り出した。男は外套の内に右腕を抱いて自宅へ戻る。すると、右腕は男の部屋に泰山木の匂いがすると話し出すのだった。これまでの孤独が染みついた部屋で、男は純潔を保った娘のように儚くも冷ややかな体温を持った娘の右腕を愛で始めるのだが――
もう一度、兄と一緒に星空を眺めるために 73歳のアルヴィン・ストレイト(リチャード・ファーンズワース)は、アメリカ・アイオワ州ローレンスで娘のローズ(シシー・スペイセク)と二人で暮らしている。ある日、転倒して無理矢理、病院に連れていかれる。医者からは治療をするように言われ、普段は歩行器を使うようにと指導されるが、拒絶。2本の杖を使うことだけは受け入れてさっさと家に帰ってしまう。頑固な老人である。雷雨の夜、仲違いをして長らく口もきいていなかった、76歳の兄のライル(ハリー・ディーン・スタントン)が心臓発作で倒れたという知らせが入る。ライルが暮らすウィスコンシン州マウント・ザイオンまでは560km。車であれば一日の距離だが、運転免許証を持っていない。しかし、自分の力で会いに行くと決めたアルヴィンは周囲の反対に耳も貸さず、たったひとり、時速わずか8kmのトラクターに乗り、旅に出る。もう一度、兄と一緒に星空を眺めるために。
ニューヨーク、夏のある暑い日の午後。テリーはいつものようにバージンの女の子をモノにして、親友のキャスパーに自慢しながら、街をブラつき、仲間がたむろしているポールの家へ向かう。くすねたビールを飲み、ドラッグを決め、SEXの話で盛り上がる。一方、ルビーの家ではジェニーたち女の子5人もSEXの話ばかり。経験豊富で無防備なSEXを楽しむルビーは自分の体験談をネタに盛り上げる。ジェニーはバージンを奪い、その後は連絡もしてこないテリーを許せない。HIV感染を心配するルビーはジェニーと検査結果を聞きにいく。テリーとのSEXしか経験のないジェニーはルビーについてきて検査を受けただけだった。しかし検査結果はルビーはネガティブだが、ジェニーはポジティブだった。たった1回、1人の男とのSEXのために突然の死の宣告をされてしまったジェニー。とにかくテリーを見つけなければいけない。会って、このことを伝えなければ。しかし、テリーは新たなバージンの子を誘い出し、仲間たちと夜のプールではしゃいでいる。自分自身がHIVキャリアとも知らずに。
17歳のヨンジェは家を出て、教会の保護施設でほとんどの時間を過ごしてきた。年齢制限が近づき退所を迫られる中、無責任な父のもとへ戻ることだけは避けたいヨンジェは、信仰心がないにもかかわらず「神父になりたい」と嘘をつき、居場所を守ろうとする。しかしその嘘が、唯一の友人ボムテとの関係を悪化させていく。さらに突然現れた父が、弟ミンジェまで施設に預けようとしたことで、ヨンジェの心は強い怒りと絶望に満たされていく。逃げ場のない現実の中で、彼は自分の人生を選び取るため、過去と向き合う決断を迫られる――。
ハネムーンでパリを訪れたシェーンとその妻ジューン。幸せに満ちた新婚旅行にはある秘密が隠されていた……。それはかつて彼が巻き込まれた研究の副作用で、《欲望》と《暴力》が結びつく危険な衝動を抱えていることだった。同じ研究に関わり、同じ病を抱え欲望のままに暴走するコレ。街の片隅で彼女は人を襲い続け、夫のレオは彼女を守りながら孤独な日々を送っている。やがてシェーンは症状の真相を求めてコレの元を訪れるが、二人の“止められない本能”はすでに取り返しがつかない悲劇の始まりだった――。
春の訪れを祝う新年の日、7歳の少女ラジエーは店で見た、白くぽっちゃりとした、ヒレが花嫁さんみたいにきれいな金魚が欲しくてたまらない。母親にねだってどうにかお金をもらい、初めて街中を一人で駆け抜ける。でもあちこちで寄り道をして、やっとのことで店に着いた時、お金は手もとからなくなっていた。ラジエーは途方にくれながら、どこに落としたのかと思い悩み、金魚が売れてしまわないうちに、お金を見つけようと奮闘する…。
ある病院の小児科センターに、左腕を骨折したアダムという4歳の男の子が入院した。栄養失調で痩せこけたアダムは発育が遅れ、骨が脆くなっている。裁判所は移民のシングルマザー、レベッカに問題があるとし、彼女の面会を制限する命令を下した。自らもシングルマザーである看護師長のルシーは、息子と引き離され、親権を失うことを恐れるレベッカに寄り添おうとする。しかしレベッカの思いもよらない行動と病院システムの歪みによって、ルシーは次第に追いつめられていく……。
ブラジルの小さな田舎町。サッカー少年だったルーカスは、事故によって車イス生活を送っていた。1年ぶりに復学した学校でも、歳下ばかりのクラスに馴染めず孤独を抱える中、気さくに話しかけてきた少女ライースと仲良くなる。トラック停車場で朝食を売る母と祖母と暮らす彼女は、一度も会ったことのない父親の存在に複雑な思いを抱えていた。そんな中、父親の唯一の手がかりである写真のトラックを、16キロ先の旧道で見かけたという話を耳にしたライースは、ルーカスに父親探しを持ちかける。折しも父から電動三輪車を贈られたばかりだったルーカスは、彼女とともに小さな旅へ出ることに。書き置きだけを残して姿を消した2人に、家族たちは大騒ぎとなるが…。
1956年、ブダペシュトで民衆が蜂起する。モスクワからハンガリーへ帰国したユリはカメラを手に、荒廃した街並みや犠牲者を見つめていく。その年の大晦日、ユリたちは久々に一堂に会する。政治的立場が異なる者たちも、束の間、仮装や音楽、ダンスに耽る。しかし反動分子の弾圧はとどまるところを知らず……。
1947年、ソ連からハンガリーへ帰国したユリは、共産党員の養母マグダの保護下で育つ。父は秘密警察に捕らわれ、母はこの世を去っていた。恐怖政治が布かれるこの国で、ユリは不安定な生活を強いられる。ある日、ユリはヤーノシュと名乗る男と出会う。彼は父と瓜二つの人物だった。
マグダの元を離れ映画監督を志すユリは、モスクワの大学で映画制作を学ぶ。スターリンの死後、ユリは労働者の実情を捉えたドキュメンタリー映画を完成させる。そしてユリは父がすでに死去したことを知らされる。
アメリカからハンガリーへ帰国したアンドラーシュ。根無し草状態の彼は、放し飼いにされていた犬に惚れ込み、飼い主の少女から強引に買い取る。やがてふたりは、親子とも言い切れぬ親密な関係を育んでいく。彼のかつての恋人アンナも、そんなふたりを気に掛け、彼に愛を告白するが……。
工場勤務のユトゥカは、大学生のアンドラーシュと恋に落ちるが、拒絶されることを恐れ、学生のふりをして名前も偽る。やがてアンドラーシュは真実を知るも、両親には告げられない。両家の食事会でアンドラーシュ家の階級意識が剥き出しになっていく。
政治家の夫に先立たれたエディトは、保険金や邸宅の相続を頑なに拒む。父の名声が汚されることを恐れた息子は、母エディトを別荘に軟禁した。息子の婚約者も「看守」として手を貸すが、壊れていくエディトを見るうち、結婚という結び付きに違和感を募らせていく。
児童養護施設で育ったエルジは、24年ぶりに小村で暮らす実の母を訪ねる。再婚していた母は、娘の来訪に戸惑い、彼女を姪と偽って新しい家族に引き合わせた。家族関係の修復も曖昧なまま街へ戻ったエルジは、行きずりの男と交際しながら、鬱々と日々を過ごす。ある日、素性の知れぬ中年男性がエルジの前に現れ、「君の両親は死んだ」と告げる。
りんご酒売りを廃業した男が毛皮交換所の娘と恋に落ち、逆境をバネに成長していくアクションコメディ。モノクロの雪山で出会う人々に教えを乞い、森の動物たちを罠にかけ、ついには数百匹以上いるビーバー集団の巣窟に潜り込み、死闘を繰り広げる。男は無事脱出できるのか?ハンターとして成功し、好きな相手のもとに行けるのか…??
美大生の青年アドナンは夏のあいだ、叔父の洒脱な自宅で留守番をするためにニューヨーク・ブルックリンにやって来る。同時にギャラリーでインターンを始めるが、そこで展示されているのは、去年の夏、彼が出会った奇抜な刺繍アーティストの作品だった。過去と現在が交錯し始めるなか、官能と創造の出会いの連なりが、アドナンの日常の輪郭を曖昧にしていく。
舞台は1985年、アイルランドの小さな町。炭鉱商人として生計を立て、家族と慎ましく暮らすビル・ファーロング(キリアン・マーフィー)は、クリスマスが近づくある日、石炭を届けに訪れた地元の修道院で、目を背けたくなる現実を目撃する。そこに身を置く少女から「ここから出してほしい」と懇願され、若い女性たちが行き場もなく苦しんでいる現実と向き合うことに。見て見ぬふりをすることが賢明だと理解しながらも、良心の呵責に悩むビル。そんな彼が、ついに下す決断とは――。
30歳間際の自称・映画監督の太郎。大分県で行われる映画祭に入選を果たし意気揚々と現地に向かうも、作品を厳しく批判されてしまい意気消沈。映画祭のパーティーをすっぽかしてフラフラと隣町の豊後大野へ向かうと、そこで太郎の映画を観ていた未希という不思議な女性と出会い、一泊二日だけの小さな旅をすることに。正体不明ではあるが、明け透けな性格の未希に映画づくりに自信を持てない自分をさらけだし、ほのかな恋心も抱き始める太郎だったが…ふたりがたどり着く、旅の結末は?
1997 年台北。受験に失敗し、強引な母の勧めにより名門女子校「第一女子高校」の”夜間部”に進学した小愛(シャオアイ)。同じ教室で同じ机を使うことになった全日制の成績優秀な生徒、敏敏(ミンミン)と、小愛は机に手紙を入れるやりとりから “机友(きゆう)”=デスクメイトになる。夜間と全日制。制服は同じでも、胸の刺繍の色が違う。ある日、小愛は敏敏から学校をサボるために制服を交換することを提案され、次第に、小愛が敏敏からもらった全日制の制服を来てふたりで遊びに行くようになるなど行動がエスカレート。やがてふたりは同じ男子校生を想っていることに気づき……。
文学者ド・ビューラドールは、裕福な一族から家庭教師の仕事を得、南国の孤島へ招聘される。雇い主は妖艶な3人の女。ドー、その娘クロ、クロの娘ジョー。生徒はジョーの妹で13歳のフロだが、外国にいるらしい。やがて三世代の女たちは各々、この新任家庭教師を誘惑していく。そして、ド・ビューラドールは、まだ出会ってもいないフロに心を奪われて……。
年老いた夫婦、シャルルとリュシーは慎ましく暮らしていた。ある日、南仏の豪邸を相続したとの知らせを受け、退屈な日常は一変していく。ふたりはさっそく南仏へ向かうが、目当ての館はなかなか見つからず……。
マルクとその一味は、大富豪の令嬢クッキーを誘拐。しかし聡明で蠱惑的なクッキーは、ギャングの構成員を次々と懐柔し、彼らを骨抜きにしていく。そこを付け狙う第三者まで現れ、狂おしいほど滑稽な抗争に発展する。
保守的な村社会から除け者にされるマリーと母。母の死をきっかけに、マリーは村人たちを相手に売春をはじめる。男たちを利用して稼いだ金を、必要のない商品の購入で浪費し、彼女のあばら家はモノであふれていく。
天才的なドライビングテクニックを持つ寡黙な“ドライバー”(ライアン・ゴズリング)は、昼間は映画のカースタントマン、夜は強盗の逃走を請け負う運転手という2つの顔をもっていた。ある晩、仕事を終えたドライバーは、同じアパートに暮らすアイリーン(キャリー・マリガン)と偶然エレベーターで乗り合わせ、一目で恋に落ちる。次第に親しくなっていく2人だったが、ある日、アイリーンの夫スタンダード(オスカー・アイザック)が、服役を終え戻ってきた。アイリーンは、ドライバーに心を残しながらも家族を守る選択をし、ドライバーも一旦は身を引き、家族から距離を置く。しかし、ある晩、ガレージで血まみれで倒れているスタンダードを発見。服役中の用心棒代として多額の借金を負ったスタンダードは、マフィアから妻子の命を盾に、強盗をするよう脅されていたのだ。絶体絶命のスタンダードは、ドライバーに助けを求め……。
ヨンウンは水泳インストラクターとして静かな生活を送っていたが、その日常は7歳の娘ソヒョンの奇妙な行動によって次第に崩れ始める。彼女の小さな手が巻き起こす恐怖は日に日に増してゆき、母娘の関係は闇に包まれていく。そして、20年後――。特殊清掃の仕事に携わるミンと、新たな同僚となったヘヨン。それぞれ生い立ちに暗い過去を抱える2人は共に暮らし始める。しかし、周囲で次々と起こる不可解な出来事をきっかけに、2人の生活に不気味な影が忍び寄る…。過去と現在、2つの物語が交錯したとき、逃れられない狂気が姿を現す。
フリーランスのライター、マーゴと、料理本を作る夫ルーは、結婚して5年目。二人の間に子供はいないが、いつまでも恋人同士のように仲睦まじく暮らしている。朝は一緒に目覚め、ベッドの中でひとしきり冗談を言い合い、キッチンで新しい料理を研究するルーにマーゴがちょっかいを出す。恋愛時代の情熱やときめきは薄れつつも、何ひとつ不満もなく穏やかな愛情を育む毎日。ある日、マーゴは仕事で訪れた島で、ダニエルという一人の青年と出会う。情熱的な眼差しをもつダニエルに、強烈に惹かれる何かを感じてしまうマーゴ。ダニエルとの束の間の時間を楽しむが、彼が偶然にも自分の家の真向かいに住んでいることを知り、激しく動揺する。意図せずダニエルと過ごす時間が増え、夫とは正反対の彼に惹かれていくマーゴ。どうにもならない思いが募ったとき、マーゴが決めた道とは――。
ロックバンド「ゼラチン・スケラティン」をこよなく愛する2組の音楽ファンは、ライブの開催を心待ちにしていた。そんな中、宇宙衛星の不慮の事故から“怪獣サメ男”が誕生してしまった。やがて怪獣サメ男は突如ビルよりも大きく巨大化。怪獣グラメタシャークとなって町を破壊しながら進み始め、ライブの開催も危ぶまれる状況に。軍も対策を講じるが、怪獣グラメタシャークの進撃は止められない。果たしてどこに向かうのか?ライブは開催できるのか?
17歳の私と、父とその友人、3人だけで過ごす森の中。大人の不完全さに気づいてしまった、生涯忘れられない瞬間―17歳の少女サムは、父クリスと彼の旧友マットとともに、ニューヨーク州キャッツキル山地へ2泊3日のキャンプに出かける。二人の男たちは、旅路の間、長年のわだかまりをぶつけ合いながらも、ゆるやかにじゃれ合う。年齢以上に聡明なサムは、彼らの小競り合いに半ば呆れつつも、聞き役、世話役を全面的に引き受ける。しかし、男たちの行動によってサムの“大人への信頼”が裏切られたとき、サムと父は“親子の絆が揺らぐ瞬間”を迎えることになる。
1999年。あなたの本当の想いに触れて、僕は僕を知った。ざらついた記憶に宿る故郷の景色と、母の無償の愛――若くして恋人を亡くし未婚の母となったソヨンは、赤ん坊の息子ドンヒョンを連れてカナダのバンクーバー郊外へと移住する。ソヨンは工場で働きながら、言葉や文化の壁、人種差別に直面する日々の中、懸命に息子を育てていく。やがて16歳となったドンヒョンは英語名“デービッド”を名乗り、すっかりカナダでの生活になじんでいた。しかし、彼の心の奥底では自身のルーツ、特に一度も会ったことのない父親の存在への思いが次第に募っていく。そんなある日、二人に届いた衝撃的な知らせをきっかけに母と息子は初めて韓国へ帰郷し、悲しみの過去と対峙することになる――。
厳しい練習に耐え、それでも「踊ることが大好き」と、きらきら目を輝かせるバレエダンサーの卵たち。成功への厳しい道のり、プレッシャー、痛み、限りない美への追求、将来への希望と不安。異なる境遇を生きながら、夢を叶えるために自分を限界まで追い込む子供たち。バレエという究極の美が与える、夢の力。あくなき情熱をめぐる、家族の物語。それは決してバレエの世界にいる彼らだけのものではなく、私たちすべてに、生きることの意味を教えてくれる。
ハンガリー、ある田舎町。シュミットはクラーネルと組んで村人達の貯金を持ち逃げする計画を女房に話して聞かせる。盗み聞きしていたフタキは自分も話に乗ることを思いついた。その時、家のドアを叩く音がして、やって来た女は信じがたいことを言う。「1年半前に死んだはずのイリミアーシュが帰って来た」、と。翌日、イリミアーシュが村に帰って来る。彼は村にとって救世主なのか? それとも?
ウサギを追いかけて机の引き出しの中に飛び込んだアリス。彼女が迷い込んだのは奇想天外で摩訶不思議な世界だった……。
郊外で小さな金属加工工場を営みながら平穏な暮らしを送っていた夫婦とその娘の前に、夫の旧い知人である前科者の男が現われる。奇妙な共同生活を送りはじめる彼らだったが、やがて男は残酷な爪痕を残して姿を消す。8年後、夫婦は皮肉な巡り合わせにより、男の消息がつかめそうになる。しかし、そのことによって夫婦は再び己の心の闇と対峙し、互いの奥底に抱えてきた秘密があぶり出されていく。
ジョージアに暮らす元教師のリアは、行方不明になったトランスジェンダーの姪、テクラを探すため、テクラを知るという青年アチとともに、トルコ・イスタンブールへと旅立つ。しかし行方をくらませたテクラを見つけ出すのは想像以上に困難だった。やがてリアは、トランスジェンダーの権利のために闘う弁護士、エヴリムと出会い、彼女の助けを借りることに。なぜテクラはジョージアを離れたのか。東西の文化が溶け合い異国情緒あふれるイスタンブールを舞台に、テクラを探す旅を通して、リア、アチ、エヴリム、3人の心の距離が、少しずつ近づいていく――。
寝る場所を求め街を徘徊するアルマンのもとへ、疎遠になっていた異母兄ギヨームが父の死を告げに現れる。彼らの父はボウリング場<サターン・ボウリング>の経営者であり、狩猟を趣味とするハンターでもあった。警察官として働くギヨームは、遺産として継いだボウリング場を職も家も持たないアルマンに委ねる。だが婚外子の自分を捨てた父への怒りを抱えたアルマンは、傍若無人な経営で揉め事を起こしてばかり。そんなある日、兄弟の周囲で若い女性を狙った連続殺人事件が発生。ギヨームは事件を追うなかで、底知れぬ暴力の螺旋へと足を踏み入れていく。
修学旅行の前日。セミ(パク・ヘス)は、教室で不思議な夢を見た。胸騒ぎを覚えたセミは学校を抜け出し、想いを寄せるハウン(キム・シウン)の病室へと走る。自転車との衝突で脚をけがしたハウンは、修学旅行を諦めて入院中なのだ。ところが、ふいに見てしまったハウンの手帳の一言に、セミの視線が止まる。“フンババにキスしたい”。夢のせいで不吉な予感から逃れられないセミは、一緒に修学旅行に行こうとハウンを必死で説得し、ビデオカメラを片手に何とか旅費を工面しようとする。しかしどこか煮え切らないハウンの態度に、セミの抑えていた感情がついに溢れ出す。心に秘めてきた想いを、今日こそ伝えたい。焦るセミと、ある事情を抱えるハウン。お互い言葉にならない気持ちを抱えたまま、2人だけの夜が訪れた――。
文化祭前日に突如バンドを組んだ女子高生たち。コピーするのはブルーハーツ。ボーカルは韓国からの留学生!本番まであと3日。4人の寄り道だらけの猛練習が始まった!
インターポールがタイの黄金の三角地帯の麻薬基地を一掃することに成功。組織は大打撃により資金源を失い、報復としてインターポールに宣戦布告をする。その攻撃によりインターポールの局員13名が殺され、窮地に陥った香港警察は超法規のプロフェッショナル・チーム”エンジェル“に組織壊滅を依頼する。ボスのジョは凄腕の三人、西城、エレイ、ムを招集し、エンジェルは熾烈な戦いへ突入していく―。
ある朝、少年パスカルは学校に行く途中で、ふわりと宙に浮かぶ赤い風船を見つける。風船は街灯に紐が引っかかって動けなくなっていたのだ。放課後、風船を持って家へ帰り着いたが、窓から風船を放り出されてしまう。しかし、不思議なことに、風船は窓際にふわふわと浮いてとどまった。風船と友達になったパスカル。いじめっ子たちが、風船を我がものにしようと追いかけてくる。パスカルは風船とパリの街を逃げ回る・・・。
はるか昔、東の国のある島。子供たちひとりひとりがロバを飼う習慣があった。ビムは最も美しいロバで、アブダラがその飼い主だったが、アブダラはとても貧しかった。意地悪な領主の息子メサウドは、美しいビムに一目惚れし、アブダラからビムを奪い取った。連れ去られたビムを取り返そうと、アブダラは勇敢にも領主の屋敷に忍び込むが、護衛に見つかり牢に入れられてしまう・・・。
パスカル(パスカル・ラモリス)の祖父(アンドレ・ジル)は学者で、気球を発明し、フランス中を旅する計画を立てていた。なんとしても冒険がしたいパスカルは、こっそりゴンドラにしがみつき、気球に乗り込む。北フランスのベテューヌを出発し、パリを通過、ブルターニュから南へ。次々と災難に見舞われるが、アルプスを越え、ニームで海水浴を楽しむ。しかし、闘牛場での一時着陸の際に、気球はパスカルひとりを乗せたまま空に上がり、みな大慌てする・・・。
フィフィ(フィリップ・アブロン)は邸宅から時計を盗み、サーカス団に逃げ込む。支配人は彼を警察には突き出さず、鳥人間に仕立てようとする。背中に羽をつけ空中を飛ぶ危険な演目だ。団員のミミ(ミレイユ・ネーグル)に一目惚れし練習をはじめたフィフィは、空中を飛べるようになり、天使のふりをして時計を盗みミミにプレゼントをする。しかし、ミミに想いを寄せる猛獣使い(アンリ・ランベール)と喧嘩になり、サーカスは崩壊。警察の追跡がはじまり、フィフィは空高く舞い上がる・・・。
南仏カマルグ地方に、白く美しい荒馬をリーダーにした野生馬の一群がいた。“白いたてがみ”と呼ばれる馬の存在は噂となり、牧童たちは野生馬を捕獲し始める。漁師の少年フォルコ(アラン・エムリー)は、牧童たちの手から逃れた“白いたてがみ”を見つけ、ひっそりと近づき、手綱を握った。ひきずられながらも手綱を放さないフォルコに、馬は次第に心を許す。しかし、すぐに牧童たちに見つかり、フォルコは馬をなんとしても守ろうとするが・・・。
その日暮らしの父親バグと腹違いの兄ハンターと暮らす12歳の少女ベイリーは、友人もいない寂しさとやり場のない閉塞感を募らせて、身の回りの風景や野生の鳥をスマホで撮影する事で孤独を紛らわせる日々を過ごしていた。そんなある日、父親のバグが3ヶ月前に知り合ったばかりの子連れの恋人ケイリーと結婚式を挙げると宣言する。突然の環境の変化に気持ちが整理できないベイリーは結婚式に出席しないと言い放ち、家を飛び出してしまう。そして兄のハンターが友人たちと町の自警団を結成した事を知り、仲間に入れてもらおうとするのだが、全く相手にされない。だが勝手に兄の後を追いかけ、彼らが襲撃する家に辿り着くも警察に通報され、散り散りになってしまう。ただ一人、草原に逃げ込んだベイリーは、そこで“バード”と名乗る謎めいた男に出会うのだが…。
大規模酪農場で飼育されているホルスタイン・フリーシアン種のルマは、一頭の雌牛を出産する。やがてルマは子牛から離され、搾乳機に繋げられ、餌を食み、放牧されて走り回り、種付けされ、また子を生む。カメラは極力牛の目線の高さに据えられ、農場の日々の営みと、家畜たちの日常が綴られていく。ルマの物言わぬ瞳が語りかけているものとは?
ヨークシャーの荒れ地に佇む屋敷“嵐が丘”の主人アーンショーが、ひとりの孤児を連れ帰る。少年はヒースクリフと名づけられ、アーンショーの娘キャサリンと一心同体のような強い絆で結ばれるが、キャサリンは裕福な家の息子エドガーと結婚してしまう。出奔したヒースクリフは数年後に大金持ちになって舞い戻り、再びキャサリンの前に現れるが……。
「フランスのテレビ番組のためにドキュメント・フィルムを撮らせてほしい」1983年、デヴィッド・シルヴィアンのレコーディングに立ち会うため、ベルリンに滞在していた坂本龍一のもとを訪れた監督、エリザベス・レナードはこう告げた。それから1984年5月。坂本が4枚目のソロアルバム『音楽図鑑』を制作し始めた頃、東京でわずか1週間という短期間で撮影が行われた。レナード監督を含めた6名の小さなチームは、日本という国を、東京という街を、そして坂本龍一という音楽家を記録した。完成後の1985年には、ロッテルダム、ロカルノ、サンパウロなどの国際映画祭で上映、日本では同年6月9日に第1回東京国際映画祭で上映された。1986年、フランスでテレビ放映されたのち、発売されたVHSとDVDも長らく入手困難な状況が続いていたが、近年になり倉庫に眠っていた16mmフィルムが発見され、修復を経てデジタル化が実現した。この60分余りの映像には、坂本の貴重なインタビューやスタジオでのレコーディング風景に加え、彼が出演したCM、YMOの散開コンサート、大島渚監督『戦場のメリークリスマス』(83)の印象的な一場面などが収められている。渋谷スクランブル交差点、新宿アルタ、原宿の竹の子族……80年代の息づくような東京の景色とともに映し出されるのは、幼少期の記憶、変わりゆく文化と社会、創作のプロセス、そして自らが追い求める音楽について語る、当時32歳の坂本の姿だ。育った街に耳を澄まし、時代の流れを感じながら、彼はどのような未来を見つめていたのか――今もなお人々の心に生き続ける世界的音楽家・坂本龍一、若き日のポートレートを通して《東京の音》を体感できる幻のドキュメンタリーが、約40年の時を経てついに4Kレストア版で蘇る。※本作品は4K対応作品ではございません。
パリのレストランでギャルソンとして働く初老の男アレックスは20年前に妻と別れ、いつも女性たちからは放っておかれない魅力を醸し出す洒脱な男。レストランの給仕長として仕事も熱心で頼りがいもあり同僚たちからも慕われている。不器用で奥さんと別居している同僚のジルベールを居候させる気の良さも持っている。そんなアレックスの夢は父の遺産で海辺の土地に遊園地を作ること。ある日昔の知り合いで英語教師をしている女性クレールと再会、アレックスは夫との離婚を控えたクレールに惹かれていくが・・・。
クイズで日本旅行が当たり大阪へとやってきた香港の青年・九扇。ところが、ツアーコンダクターは片言の広東語しかできないクミ、おまけに超のつくドケチツアー。クミの案内で東京に来た九扇は、香港旅行が大当たり!クミとホームレスの茜と香港にUターン。そこで、イカサマ家族と共に巨大多国籍グループとハチャメチャな戦いを繰り広げる。香港、大阪の釜ヶ崎・飛田でのゲリラ撮影、渋谷ハチ公前での無許可ライブ、山本監督夫妻「新婚さんいらっしゃい」に一般応募で出演、専用映画館「TANK2」の建設と、内容から公開まで呆れ返るパワーがみなぎる、香港との合作コメディー。
日銭を稼ぎながら日々を送るクミは、緑の生い茂る廃墟に迷い込む。奇妙な懐かしさを抱き、そこに移り住み、昼は畑を耕し、夜は星を眺めると、ロビンソン・クルーソーのような生活を送り始めるが……。『闇のカーニバル』の主演太田久美子と、後に芥川賞作家となる町田康(当時町田町蔵)を中心に、ハードコアパンク「GIZM」の横山SAKEVIやJAGATARAのOTO、江戸アケミら個性的なキャストが集結。ジム・ジャームッシュ監督作『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のトム・ディッチロが撮影を担当している。
運命に導かれるように親しくなった、二人の少女。俳優を夢見る高校生スアンの前に、都会から美しい人気俳優のソルが転校してくる。煌びやかな世界で自分を見失ったソルの心は、スアンの青く燃えるような演技に惹かれていく。放課後、冬の海でサーフィンをした二人は、冷えきった体を炎の前に寄せ合い、互いの孤独に触れながら少しずつ心を通わせていく。しかし、思春期の揺れる想いは「友情」と「恋愛」の狭間ですれ違い、ソルはスアンの前から姿を消してしまう。成長して人気俳優となったスアンは、あのとき伝えられなかった想いを胸に、今もなおソルの面影を探し続けている。そしてある寒い雪の日、彼女はふたたび、冬の海へと向かう。
40歳、未だ童貞の孤独な男が、運命の女性に出会い、胸を焦がす初恋に身を委ねる。心の支えは、母が遺したサメのフィギュア。幻の巨大サメ――守護霊のように寄り添い、男を奮い立たせる。恋の喜びと喪失、切ない青春の疼きが、深海の如く渦巻く。世界初の、青春サメ映画、ここに誕生。静かな本屋の片隅で、男の人生が、牙を剥いて動き出す。
周囲に馴染めず、転校を繰り返す杏菜が、新たな寄宿学校で出会ったのは、美しく完璧な少女・莉花。 しかし、莉花は突然、屋上から飛び降りて命を絶ってしまう。残されたのは一冊の≪日記≫。ページをめくるたび、莉花の苦悩や怒り、痛み―― そして、言葉にできなかった“ある秘密”が浮かび上がる。その秘密に触れた杏菜と少女たちの心は揺さぶられ、初めて“自分”と向き合い始める。やがて日記から青白く揺れる“鬼火”のような魂が現れ、杏菜の心に静かに入り込む。その魂に導かれ、杏菜は予想もつかない行動へと踏み出す――。観る者は知らず知らずのうちに、その奇妙で美しい世界へと引き込まれていく。
環境破壊により人類が地上に暮らせなくなってから25年が経った地球。豪華な地下シェルターで暮らす富裕層のアメリカ人家族のもとにある日、外の世界からやって来た少女が現れる。少女は人間が住めない地表の様子を語り、家族が川を渡ろうとして死に、自分だけが生き残ったと告白する。一行はしぶしぶ少女を地下シェルターに迎え入れることにしたが、この出来事をきっかけに、これまで孤立しながらもルーティーンを守って暮らしてきた家族の脆い日常が静かに崩れはじめ、やがて自らの過去と存在の真実に対峙することになる。
インドのムンバイで看護師をしているプラバと、年下の同僚のアヌ。二人はルームメイトとして一緒に暮らしているが、職場と自宅を往復するだけの真面目なプラバと、何事も楽しみたい陽気なアヌの間には少し心の距離があった。プラバは親が決めた相手と結婚したが、ドイツで仕事を見つけた夫から、もうずっと音沙汰がない。アヌには密かに付き合うイスラム教徒の恋人がいるが、お見合い結婚させようとする親に知られたら大反対されることはわかっていた。そんな中、病院の食堂に勤めるパルヴァティが、高層ビル建築のために立ち退きを迫られ、故郷の海辺の村へ帰ることになる。揺れる想いを抱えたプラバとアヌは、一人で生きていくというパルヴァティを村まで見送る旅に出る。神秘的な森や洞窟のある別世界のような村で、二人はそれぞれの人生を変えようと決意させる、ある出来事に遭遇する──。
2008年、北京オリンピック開催間近の中国。友人を誤って死なせた青年ランは、刑期を終えゴビ砂漠の端にある故郷に戻って来る。区画整理で人の流出が止まらず廃墟が目立つ街では、捨てられた犬たちが野生化して群れとなっていた。ランを気に掛ける警官から捕獲隊に誘われるが、ひょんなことから一匹で行動している黒い犬と出会う。決して捕まらず賞金を懸けられた黒い犬とランの間に、いつしか奇妙な友情が芽生えるが…。
ベルギーのテニス・アカデミーに所属する15歳のジュリーは、その実力によって奨学金を獲得し、いくつもの試合に勝利してきた。ある日、突然、担当コーチのジェレミーが指導停止になったことを知らされると、彼の教え子であるアリーヌが不可解な状況下で自ら命を絶った事件を巡って不穏な噂が立ちはじめる。ベルギー・テニス協会の選抜入りテストを間近に控えるなか、クラブに所属する全選手を対象にジェレミーについてのヒアリングが行われ、彼と最も近しい関係だったジュリーには大きな負担がのしかかる。それでも日々のルーティンを崩さず、熱心にトレーニングに打ち込み続けるジュリーだが、なぜかジェレミーに関する調査には沈黙を続ける……。
母を亡くした小学4年生の美咲は、奇行を繰り返し不登校に。家族や教師が心配する中、彼女は陶芸家の工房で土に触れながら過ごすようになる。ある日、父と親しげな女性が現れ、美咲は彼女が“新しい母”になると悟る。喪失と再生の狭間で、少女と周囲の人々の人生が静かに動き始める。
11歳でパリ国立高等音楽院に入学し、ナディア・ブーランジェに師事。才能は開花しクラシックとジャズを組み合わせた独自の音楽を作り上げた。ジャズミュージシャンとして活躍したのち、フランス映画音楽の世界に飛び込みジャック・ドゥミとのコンビで『シェルブールの雨傘』他名作を生みだす。海を越えハリウッド映画の作曲も数多く手がけた。本作は、晩年のルグランに密着し、貴重なアーカイブと、スティング、クロード・ルルーシュなど、45名以上の音楽家や映画監督、家族のインタビューを通じて、彼の人生を振り返りながら貴重な音楽制作の舞台裏に迫る。音楽家としての高いプライドを持ち、一切の妥協を許さない厳格な姿勢、普段見せることのない作曲中の姿、創作にもがき苦しみ重圧に苦悩するという知られることのなかった素顔を映し出す。